FUJIFILM X-A1を導入する

 一眼レフカメラ界隈では、最大手二社CanonとNikonのAFの挙動について、速度のCanon、精度のNikonなんて言われたりします。いわく、Canonは動いている対象にも即座にピントを合わせるべくスピードはとても速いが精度は大雑把、逆にNikonはきっちり精度を合わせてくるけど少し遅い、というような感じ。

 どこまで本当かどうかわかりませんが、現在の私の主力機Canon EOS 70Dについていえば、まぁ、そういうこともあるかなぁというような、そんな感じ。背面液晶の小さい画面で見ているとジャスピンに見えても、うちに帰ってPCに取り込んで見てみるとなんかネムかったり。もともと同じ被写体に対して何度も繰り返しシャッターを切る癖が付いているので、少なくとも静物・風景については問題となることはそうそうありませんけれど。ただメイン被写体のモータースポーツだとそういうわけにもいかず、「これだ!」と思って切った写真のピントが眠いと、ちょっとがっかり。

Canon EOS 70D + EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STM
これはライブビュー撮影なので精度に問題はなし
精度問題はあくまで位相差AFの話

 と言っても、それは買う前から織り込み済みの話で、多少の精度を差し引いても「とにかく動いているものにAFがついていってほしい」という期待を込めて買ったのが70D。動体最優先なら7D系買えよという声も聞こえてきそうですが、万能性も捨てられないところが甘いところでしょうか。まぁ予算的な問題も大きかったですけど。

EOS 70D + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporary
動きものにはめっぽう強いCanon。
でも実はモータースポーツ程度ならCanonでもNikonでも大した差はないという話

 ともかく、動体方面では最近シグマの150-600mmを導入したこともあって、当初の目的は達成されているし、70Dに文句を言いたいわけではありません(Canon機に対する文句はそういうとこより、操作性についての方が……)。今回のエントリの主題は、新たに導入したもう一台のカメラについての話題です。




 そもそも最初から、サーキットでマシンを追う主力機以外に、それ以外を担当する別機種を導入する予定でした。これについては、70Dが他の機種、それこそNikon機を買っていたとしても同じです。
 主な理由はサーキットでレンズ交換をしたくないというもの。カメラが1台しかないと超望遠と標準〜レンズを交換して運用する必要がありますが、サーキットは埃っぽいし風も強い日も多いので、できることならレンズ交換なんてしたくないんです。朝、家でレンズを装着したら、そのまま出先でレンズ交換せずに(もしくは最小限に抑えて)家に帰ってきたい。
 そのために、超望遠を装着したカメラの他に、標準〜中望遠レンズをつけたカメラを用意して二台運用にしたい。

 では何の機種を新たに買い足すか。選択肢は三つあって、現在持っているPENTAX Q10でまかなうか、あるいはCanonのEF-Sマウント機をもう一台買うか、もしくは小さくて高画質なミラーレス機(あるいはコンパクトデジカメ)を買うかです。
 順番に検討すると、Q10での運用はそこそこなんとかなりそうですが、この機種に期待しているのは一風変わった絵面の写真であって、普通の写真ではない。
 サーキットではグリッドウォークや一般風景を撮影することになりますが、Q10の魅力をフルに活かして撮るケースはちょっと少ないです。それはそれで面白そうですが、やっぱり役割が違う。

PENTAX Q10 + 03 FISH-EYE
盛大に出るゴーストやフレア、あるいは収差がQマウントレンズの特徴

 EF-Sマウント機をもう一台というのは、レンズを流用できるという点で経済的です。しかし一眼レフ機のようなでかいカメラを2台も持ち歩くのはちょっと勘弁願いたい。それでなくても、150-600mmレンズを70Dに装着すると、持っているカメラバッグを相当に圧迫するので、できれば小さいカメラにしたい。EOS x7あたりだとそこそこ小さいですが、それでもなんだかんだ一眼レフの大きさの上、性能的にもやや疑問が残る。

 となると三つ目の選択肢が現実的な落としどころで、不経済ではあるものの、まぁ計画的に資金をつぎ込めばなんとかなるだろうと判断しました。

 で、その計画に基づいて先月購入したのが、FUJIFILMのX-A1です。Xマウントの中では最安のエントリー機の上、後継のX-A2もすでに出て出荷終了品になってますが、画質については上位機に負けないレベルという話。
 候補としてはOLYMPUS/Panasonicのマイクロフォーサーズや、SONYのEマウント機も当然挙がりました。特にマイクロフォーサーズには心惹かれましたが、FUJIFILMの出力する色彩がとても好みだったため、こちらを選択。
 機種については同じエントリー機でもX-Trans CMOSを搭載するX-M1や、上位機のX-T1も検討しましたが、まず動体撮影については70Dに頼ることを決めていたため、像面位相差AFといった最新技術が載っているX-T1は今は必要ない。それに、X-Trans CMOSから出力されるRAW画像に対してのデモザイク処理に弱点があり、遠景の木々の葉や花がおかしな形になるという話を聞いていたので、X-M1も含めて今回は敬遠。そのうち改善されるとは思いますが、現時点ではX-A1の方が素直な画像を出力してくれるという判断です。

 で、購入してから花畑に行ったり旅行に出かけたりしてX-A1の実力を見ていますが、これが期待以上の写りでとても満足しています。

FUJIFILM X-A1 + XC50-230mm F4.5-6.7 OIS

 レンズは付属のキットレンズXC16-50mm F3.5-5.6 OISと、XC50-230mm F4.5-6.7 OISのみしか持ってませんが、これが安価なキットレンズとはとうてい思えない、クリアな描写をする。解像度も非常に高く、他社の単焦点レンズに匹敵するような性能です。

X-A1 + XC16-50mm F3.5-5.6 OIS

 ズームレンズでこれなんだから、フジノンの単焦点レンズはもっと凄いんですかね。このレンズ2本とボディのセットが4万円ちょいで買えるのだから、価格破壊なんてレベルじゃない。

X-A1 + XC50-230mm F4.5-6.7 OIS

 期待していた色味も事前に思っていた以上に印象的な色で出力してくれるので、Lightroom等で調整する必要がほとんどない。フィルムシミュレーションでいろいろな色味にできますが、特に彩度の高いVELVIAの色が好ましくてこればっかり使いがちです。油断するとすぐに色飽和するほど彩度が高いですが、なんだかもう飽和しちゃっていいやという気分にすらなる。

X-A1 + XC50-230mm F4.5-6.7 OIS

 昨年まで使っていたPENTAX機(特にK-r)の色がすごく好きで、Canon機に乗り換えてからも折に触れて『やっぱり前の方が……』と未練がましく思っていたものですが、それが綺麗さっぱり吹き飛んだ。PENTAXは青と緑が抜群に綺麗でしたが、FUJIFILMも同じく青と緑が素晴らしい。

X-A1 + XC16-50mm F3.5-5.6 OIS

 あとよく言われる人物の肌色。女性を撮ると特に良い(この場合はフィルムシミュレーションでASTIAが最適でしょうか)。

X-A1 + XC50-230mm F4.5-6.7 OIS
モデルはレースクイーンの森園れんさん
解像しすぎるくらいなので後処理で明瞭度を落とした方が良いかも

 深い色合いのPENTAXの色に比べ、透き通った明るい色なのがFUJIFILMの色。一種独特の印象だったPENTAXの描写とは違いますが、素直で明るいFUJIFILMの描写もまた好ましい。ようやく前使用機の呪縛が解けた思いです。

X-A1 + XC16-50mm F3.5-5.6 OIS

 いちおう書いておくとCanonの色が悪いという話ではないです。単なる好みの話。「空は抜けるように青く写ってほしいし、草木は匂い立つほど緑色に写ってほしい」というのが自分の趣味なので、Canonだと少しおとなしすぎる。万人向けなのはCanonの色ですが、私はこってりした色が好きなので、Lightroomでどうしても調整してしまいます。
 ただ、あたりが柔らかくソフトな描写をするCanon機は、桜など薄い色の花を写すとたいへん素敵な色になることも確か。向き不向きです。

EOS 70D + EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STM
Canonは白の表現が綺麗

 AFについては、コントラストAFなので当然ですが精度が非常に高い。一眼レフ機の位相差AFにありがちなピントの悩みから解放されるのは嬉しいです。速度は他社製のミラーレス機に比べてもFUJIFILM機は遅いんですが、用途を静物・風景に絞っているので、ほぼ問題ありません。一眼レフのライブビューに比べればマシですし。唯一、猫などの動く小動物を近距離で撮影する際に弱いというのはありますが、それも根気よく撮ってればなんとでもなります。

X-A1 + XC16-50mm F3.5-5.6 OIS
モデルは和歌山電鐵貴志川線伊太祈曽駅長「ニタマ」

 それに、PENTAX K-rでデジタル一眼に飛び込むまでは、カメラと言えばRICHO RDC-5000OLYMPUS CAMEDIA SP-500UZしか使ったことがなく、それ以前ではせいぜい写ルンですくらいなもの。AFなんて遅いか存在しないかが当たり前だったので、それに比べれば(比較の対象ですらないですが)、AFはぜんぜん速い。
 ちなみにSP-500UZでF1撮影したことありますよ、前に。ホームストレートでは諦めましたが、急激に減速するシケインでは撮れました。何事も工夫です。

 ファインダーが搭載されていないというのは弱点と言えば弱点ですが、特にファインダー撮影にこだわりがあるわけではないので、こちらも自分にとってはあまり問題ありません。いつかミラーレス機でF1を追うようになったらファインダーを欲しがるでしょうけど。

 不満があるとすれば操作系でしょうか。不満というより慣れの問題もありますが、Mモード以外だとメインコマンドダイヤルに露出補正が割り当てられるのが不思議です。むしろサブコマンドダイヤルの方に割り当ててほしい。Aモードで絞りを変えようとして、せっせと露出補正していることがよくある。メインで動かしたいのは各モードごとの絞りやらシャッタースピードなのだから、名前からしてもそれらをメインコマンドダイヤルに割り当てるのが普通だと思うんですが。
 それと、動画録画ボタンがこう押しやすい位置にあると、不意に触って動画モードに切り替わってしまうので、できれば親指の当たらない位置にあると嬉しかったです。
 また、一度スリープ状態になると復帰に時間がかかる場合がある。説明書にはシャッターボタンの半押しでも復帰すると書いてありますが、それでは復帰しないことが頻繁にあり、そういう時はシャッターボタン全押しの長押しでやっと復帰します。急いでる時は電源OFF→ONした方が早いほど。
 他にも細々ありますが、まぁこれらはさほど大きな問題でもなく、こんなもんかと思って使えば慣れる程度のものです。また新しい機種が出るにつれて、洗練もされていくでしょうし。

 さて、X-A1が機材に加わって、これでやっと昨年末からのカメラ乗り換えが全部終わりました。主にサーキットでの動体撮影はCanon EOS 70Dで、静物・風景その他はFUJIFILM X-A1で、変わった写真を撮るにはPENTAX Q10で、それぞれ使い分け。ヘタクソほど機材にこだわるという通説には反論しようもないですが、まぁ趣味のことなので好き放題です。
 それに、こないだの鈴鹿2&4には70DとX-A1の2台体制で行って、改めて自分の判断は間違ってなかったと思った次第。やっぱり2台あると便利なんですよ、サーキット撮影では。
 今後、X-A1には様々な場面でお世話になりそうです。

コメント

このブログの人気の投稿

大洗へ ~ガールズ&パンツァー聖地巡礼~ 戦車編Part 1

フィットRS改造計画

鈴鹿でSIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporaryを使ってみる